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気ままに語ります。SQやコミックス、その他もろもろ発売日当日にネタバレしたりしてますのでご注意ください。
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もう23日ですか…?うおお……。
先週から胃腸炎でくたばってました。こんなときに!
もうだいぶ体調は戻ってきてますがそんなこんなで更新はできませんでした。申し訳ないです。
というか原稿ー!
全然進んでないっすよ!
冬コミで新刊なし、なんてことには絶対したくないので集中してきます。

以下、原稿より一部抜粋。
赤也中1、蓮二さん中2です。



更新どころかブログも止まってたのにその間も拍手ぽちぽち押してくださってありがとうございました!
うれしいです~!



******原稿より一部抜粋******




「だからお前は練習に集中してなさい。メニューさえあればお前は強くなるさ。そこに蓮二がいなくてもね」
最後の一言が余計だった。なぜか無性に苛立ちを覚えた。
切原が三年生に絡まれたことは部内に知れ渡った。内々で済ませることができたらこんな風に広がることはなかったかもしれないが、相手が部活停止処分になっただけに噂は急速に広まった。
ひそひそと囁かれるのは鬱陶しかったがここでまた騒ぎを起こすことはできない。同級生たちもどう切原に声をかけていいのかと迷っている様子が見て取れた。
別段、同情してほしいなんて思わないから放っておいてくれないものだろうか。いや、このちらちらと送られる視線は同情だけではなかった。
一種の嘲りも含まれている。調子に乗っているからその様だとでも言いたいのだろう。
ああ、面倒臭い。このじめじめとした視線は切原を辟易させた。
柳が自分を特別扱いしたから何だというのか。
いっそ贔屓はずるい!と騒ぎたててくれた方がましだ。
単独の練習メニューが組まれていることはいっそありがたかった。
自分のペースで進められるし集中しやすい。一度集中してしまえば周囲の雑音など気にならなくなる。とにかく今は練習だ。贔屓と言われようと県大会で実績を残せば誰も文句は言えないはずだった。
しかし切原はなかなか集中することができなかった。
「もう少し重心を下にするんだ」
低い声が切原の鼓膜をくすぐって集中しかけた意識が散漫になる。
さっきからずっとこの繰り返しだった。
「そう、その調子だ」
「は、はい!」
褒められたことで返事が上擦っているのは同級生だ。
舌打ちしそうになるのを堪えた。本当は何やってんだよ、アンタ!と大声で言いたい。
新入部員八七人が所狭しと練習している場所へ幸村と真田と柳の三人がやってきた。
今日は彼らが指導するという。新入部員に緊張が走った。
真田の指導は厳しく、うっかり私語などしようものならグラウンドを走らされる。
幸村の指導は口調が穏やかな分、優しそうに見えるが『神の子』と称される幸村を前にすると圧倒されて手足が縮こまるのかテニス経験のある一年生も初心者同然の状態だった。
そして柳と言えば。真田ほど厳しくなく、幸村ほどの威圧感もない。
何より教え方が的確で一つ教えてそれができるとさりげなく褒める。
できない場合も決して怒ることなく辛抱強くできるまで教える。
まさに手取り足とりと言った風で一年生部員たちの緊張は次第に解れていった。
何だ、何だ、一体何なんだ。アンタそれ演技だろ、絶対。
無表情なのがデフォルトなのに。
口調まで優しくなって聞いていられなかった。
柳はいつも淡々としていて口調も平坦で、一見機械的で冷めた印象なのだが、実際は相当優しい人なのだ。
だけどその優しさは今のように全面に押し出されるような誰の目にも明らかになるものではなく、いつの間にか内側に沁み込んでくるような静かで控え目な優しさなのだ。
それなのに今の柳はわざと優しげに振る舞っている。
その上、それは何日分の笑顔だ、と言いたいくらいに笑みを顔に貼り付けていた。
最初は戸惑っていた一年生部員もこれで柳に親しみを覚えたに違いなかった。馴れ馴れしく柳先輩、と呼ぶ声がして切原は苛々とした。練習に集中できない。
ストレッチを終えて次はコート半面を使ってのサーブ&ボレーの練習だ。ジャッカルが相手をしてくれることになっていた。
集中できないままコートに移動しようとしてちらりと柳の方を見ると視線に気づいたのか柳も顔を上げた。
切原を見る柳は微笑みなどは浮かべていなかった。いつもの無表情。
でも唇の端がほんの少しだけ持ちあがる。見逃しそうになるくらいのほんのわずかな表情の変化。だけどそれで柳が微笑みかけてきているのが分かる。それだけで分かるのだ。
あんな、あからさまに作った笑みでなくとも。
勿体ないじゃないか。アンタの笑顔も優しさも、分かる人だけ分かればいいんだ。そんな誰でも彼でも分からせるようにしないでほしかった。









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